>>>>003:夢と現実>>>>>






私達を乗せたバスは目的地に向かってドンドン進んで行く。

行き先は何処だろう?

遊園地とかだったらいいなぁ。ジェットコースターとか乗りたいし(笑)

きっと、泊まるホテルは豪華で、部屋も広くて、ベッドもふかふかで…

夕食はホテル自慢の豪華料理が並んだバイキングで…

温泉なんかもあったらいいなぁ。

眺めのいい露天風呂でゆったりのんびりしたいしw

あ、でもそれは温泉旅館か?;

夜は皆でゲームとかして遊んだり、肝試しとか?(笑)


絶対、忘れられない旅行になりそうw

























―――ぉい、起きろ。起きろってば!っ!」


いきなり体を揺さぶられて、私は目を覚ました。


「…んー?ぇ、はぃー…?翼さん?どうしたんですか?
あれ?何か真っ暗…?私、夜まで寝てた…?
ん?夜…?!何で夜?!ジェットコースターは?!」

「はぁ?ジェットコースターって…;」

「へ?この旅行の最初の目的地って遊園地じゃないんですか?
あーぁ、まだ全然遊んでもないのに、もう夜なんて…」

「…あいかわらず、脳天気だね。は。
そんなが今は羨ましく思えるよ…。
この状況でよくそんな事いえるね。もっと周りをよく見なよ…」

「ど、どうしたんですか?…翼さん…?」




周りをよく見ろって…?




寝起きの悪い私は、翼さんに起こされたにもかかわらず
まだボーっとしていて、半分夢の中にいた。




ボーっとする頭で、翼さんに言われたとおり周りを見渡した。





暗くてはっきりとは見えないけど



でもコレだけは言える。





絶対に確かな事は、此処はバスの中でもホテルでも旅館でもない…ということ。






こんな場所は知らない。





でも、なんとなく此処と似たような場所なら毎日の様に通っている。








此処は




学校の教室……?







だんだん目も覚めてきて、暗闇にもなれ始め周りが少しずつ見えるようになってきた。




本当ならきちんとキレイに並べられているハズの机や椅子は
教室の一番後ろにグチャグチャに積み上げられている。


そして変わりに選抜の皆が床に伏せてまだ眠っている。




起きているのは私と翼さん…それと、アレは谷口くん…かな?



少し目が暗闇に慣れてきたものの、まだはっきりとは見えない。
今の私の目では自分を入れて3人が起きている事しか確認できなかった。







…あれ?…そう言えば私ってこんな服着てたっけ?
私服っていうより、コレって制服っぽい様な…?
私、今日はジーパン穿いてた気がするんだけどなぁ?






よく見ると翼さんも、寝ている皆も同じ制服らしい服を着ている。







「ねぇ…翼さん…?もしかして…コレって……
でもまさか、そんなハズ……」









忘れ去られたような寂しい感じの学校の教室


自分の服装


周りで眠っている皆



こんなシーン 何処かで見た事がある。




でも、まさか、だってアレは映画の…マンガの話でしょ?





それに… それに…





玲さんがこんな事許す訳がない。

















「ねぇ、翼さん、そんな事現実に起こるハズないですよね?
何かの間違いですよね?
ねぇ、翼さ…」






私は翼さんを見て固まった。



翼さんは首に手をあてて悲しそうな顔で首を横に振った。










「…どうやら現実…みたいだよ。
信じられない、信じたくないけど…
だって、コレが首についてるって事がその事実を決定的にしてるんだから。」

「そ…そんな……」






私は恐る恐る自分の首にも手を当ててみた。



冷たい、重い感触。。









そう




翼さんの首についているモノ


私の首についているモノ


そしておそらくは此処に寝ている皆の首についているであろうモノ









それは  首輪。








ただの首輪じゃない。









多分、私達の命を奪ってしまうぐらいの爆弾がついているに違いない。
きっと他にも色々な機能がついているんだろう。







「ねぇ?何で?何でなの?!
玲さんは?玲さんはこの事知ってて旅行を計画したの?!
何で、何でこんなっ…」

「そんなの僕にも分かる訳ないだろ!
こっちが聞きたいよ!玲は何でこんな事…
僕だって信じたくない。こんな現実あってたまるかよ!
でも、変な制服に着替えさせられてるし、皆は寝てるし、
バス旅行だったし、そしてこの首輪がついてるんだから現実を受け止めるしかないだろ!?」

「翼さんはそれで平気なんですか?!
そんな簡単にこんな現実受け止められるわけないじゃない!
何で私達なの?!こんなの酷すぎるっ!
私達が何をしたっていうのよっ?!!」

「平気な訳ないだろ?!
僕には、僕達には夢があるんだ、サッカーで世界に行くって夢が!!
こんな所で、こんな馬鹿げた事で、その夢を壊されてたまるかよ!!
しかも、コレを計画したかもしれないのが…玲だなんて…
こんな事あってたまるかよっ!!!」

「じゃあ現実を受け止めるしかないとか言わないでよ!!」







「…んー?あ゛ー、ごちゃごちゃ煩ぇんだよ!
人の頭の上で喧嘩なんてしてんじゃねぇよ!!」



気が付くと私と翼さんは口論になっていた。
そして、ソレを止めるように不機嫌そうな声が口論の間に挟まった。









「「き、木田(くん)…」」







「人がいい気分で寝てんのに、頭の上でごちゃごちゃ煩ぇんだよ!
何なんだよ?!喧嘩ならどっか向こう行ってやれよ。」

「…(怒)この状況で何がいい気分で寝てただよ?もっと周りの状況読めよ!
能天気なのもいい加減にしろよな!」


私との口論で機嫌の悪い翼さんは、今度は木田くんと言い争いを始めてしまった。


木田くんも木田くんでいつもはおとなしい人なのに
寝起きは性格が悪いらしく、翼さんと同等なくらいに言い争っている。


ついには取っ組み合いの喧嘩になってしまった。









「ちょ、ちょっと2人とも止めなさいよ!!! そんな事したら―――










 ―――ピッ  ピッ
















「「「…え?」」」












その時だった。
何処からともなく電子音が聞こえてきた。



それは私がたった脳裏に浮かんだ事の始まりを告げる音だった。










「ま、まさか…」










 ―――ピッ  ピッ











その音は首輪から聞こえてきているみたいだった。









「い、嫌だ!何なんだよ?!この音っ!!! もしかして・・・」













暗闇の中で赤い光が点滅している。



その点滅にあわせて電子音が暗闇に響く。



そして恐怖に震えた声がこだまする。




恐れていた命のカウントダウンが始まってしまった。














「お、落ち着いて!大丈夫よきっと…… だから、だから………」


「何なんだよっ?!此処いったい何処なんだよ?何で俺の首にこんなモノがついてるんだよ?!!
大丈夫な訳ないだろ?!そんな気休めよしてくれ!!!
なぁ、誰か、誰かこの音止めてくれよ!!」




取っ組み合いの喧嘩をしていた2人のうちの1人の首輪から電子音が鳴り出した。
そう、  木田くんの首輪から―――





木田くんはまだ起きたばっかりでこの状況をよく理解していない。




でも理解はしていないものの なんとなく自分が置かれている立場は分かっているようだ。






だからこんなに恐怖に脅えているのだろう。
だからこんなに助けを求めるように叫んでいるのだろう。
だからこんなに――――――――











「落ち着けよ木田!!落ち着けって!!」

「椎名テメェ!!お前のせいでこんなっ!!
どうしてくれるんだよ?!椎名ぁ!!!」


「…木田………」








私も翼さんもどうしたらいいのか分からなかった。



ただ そんな木田くんの姿を立ち尽くして見ている事しか出来なかった。










「嫌だ!!こんな、こんな訳の分からない所で死にたくないっ!!!」












 ―――ピッ  ピッ  ピッ












木田くんはもう自分の死を確信している。







そして恐怖で脅え、必死で外れない首輪を外そうとしている。








命のカウントダウンはもう止まらない。



だんだん命のタイムリミットが近付いてくる。




私は タダ呆然と見ている事しか出来ない。







木田くんのそんな死を目前にした恐怖に満ちた叫び声で何人かが目を覚ました。






「…何だ?どうしたんだ?」
「おぃ、何やってんだよ?」
「何なのよ?一体何が起こったの?」
「…煩ぇなぁ。何だってんだよ、ったく…」






状況が分からない寝起きの人達は無神経な事ばかりを口にする。












「嫌だぁぁ!!!嫌だぁぁぁーー!!!誰か、誰かっ
誰か助けてくれよぉぉーーー!!!!」

















 ―――ピッ ピッ ピッ
                   ピッ ピピピピピピピィ―――――――――



















コレハ現実ナノ? ソレトモ夢?

ネェ? コンナコトッテアリデスカ…?

















こうして1人 チームメイトが散っていった―――
















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