>>>005:操り人形>>>>






教室のドアが開いた。


皆の視線がドアの方へと集中する。



ドアを開けて中に入ってきたのは 私の予想通りの人物



この東京選抜の監督 西園寺玲。



予想はしてたものの その姿を目にした時

すごくショックを受けた・・・



それと同時に裏切られたような気がした。



だって 玲さんがココにやってきたって事はつまり―――








ドアが開く瞬間少し期待していたのに・・・


ドアを開けた人物が玲さんじゃなきゃいいのにって


でもそんな期待はただ 空しいだけだった。






















「おはよう。皆。よく眠れたかしら?
・・・あら?まだ寝ている子も居るみたいね。
でもそろそろお目覚めの時間ね。さ、起きなさい。」




玲さんはいつもと何も変わらない様子で教室に入ってきて

少しの動揺もなく笑顔で、寝ている人を起こそうとパンパンと手を叩いた。


どうやら、まだ寝ているチームメイト達は相当寝起きが悪いらしく
玲さんの手を叩く音ぐらいでは起きる気配もない。






「・・・まだ起きないみたいね。 困ったわねー。」




そう言うと玲さんはポケットから、黒く鈍く光るモノを取り出して
ソレを天井向けて撃ち放った。







――バァンッ






小さな火花が飛び散ると同時にもの凄い音が響き渡る。







きゃぁぁあぁぁっ!!!
うわぁあぁぁっ!!!



起きていた者は叫び出す。












「Σな、何だ?!今の音?!」
「何が起こったんだ?!」



寝ていた者はビックリして目を覚まし
いきなりの大きな音に混乱しているようだ。



























そんな選抜の皆の様子を見ても玲さんは顔色一つ変えず やっぱり笑顔で普通に



「おはよう皆vやっとお目覚めねv」






私はその瞬間ものすごい悪寒が背筋に走った。



























「…ねぇ?玲さん…」


「ん?なぁに?ちゃん。ちゃんはいろいろと大変だったわねぇ。
起きてまだ状況があんまり分からないままであんな事がおきちゃって。」



そう言ってウフフと笑う玲さん。

























何で?どうして笑っていられるの?


チームメイトが死んだんだよ?


仲間が一人、この世からいなくなっちゃったんだよ?


自分が監督しているチームの子を、自分のはとこが殺しちゃったんだよ?















なのに






なのに アナタはどうして 笑っていられるの?











「木田くんももうちょっと落ち着いていればねぇ…
寝起きの悪い子だったのねぇ。」



さらにのん気な事を口にする玲さん。



もう 私には 玲さんが何を考えているのかが理解出来ない。





「まぁ、いいわ。取り敢えずご苦労様v翼。
流石は私のはとこねv始まる前にやってくれちゃって」



皆の視線が玲さんから翼さんへと集中する。



翼さんは さっきから座り込んだまま全く動かない。









――ねぇ、玲さんはこの事、知ってたんですか?
知ってて…この旅行を計画したんですか?
なにもかも分かってて 嘘ついて、楽しそうにはしゃいでいる私達を見てたんですかっ?!」



声がだんだん大きくなっていくのが自分でもわかった。



自然に声が大きくなったのか、それとも わざと大きな声をだしたのか、

きっと私は皆の視線を翼さんからはずしたかったのだ。






だから


だから 私は 大きな声をだしたのかもしれない。








「嘘をついて…?あら、失礼ね。
私は嘘なんてついてないわよ?だって『旅行に行く』としか言ってないもの。
これはちゃんとした旅行じゃないv
  あの世への―――ねv

はい、皆vよく聞いてね。今からこの旅行の目的地を発表するわよ。
目的地は―――

さっきも言ったけど、『あの世』ですv

でも、1人だけ この中でたった1人だけ目的地は違うわ。
そう、頑張った1人だけは自分の家が目的地よ。

皆は映画見たことないかしら?…あの映画はR-15指定だものねぇ。
見た事ある人はもう分かるわよね?
今から自分達が何をするのかを。

そう、 
バトルロワイアル よ―――









玲さんは自分が何を言っているのかわかっているのだろうか?


こんな話の内容をずっと笑顔で喋るなんてどうかしてる。







アレはきっと玲さんじゃないんだ。



アレは西園寺玲の形をした人形なんだ。



だって 本当に玲さんならこんな事 許すハズがないもの―――



アレは良く出来た 西園寺玲そっくりのマリオネットなんだ。



誰かが後ろで糸を引っ張って人形を操っているに違いない



きっとそう―――

























私は頭の中で そんな訳の分からない事を自分に必死で言い聞かせていた。



信じたくなかったから



アレが本物の西園寺玲だって事を。







だから私は 自分に嘘を吐く


玲さんは誰かの操り人形にされてしまったのだと




そう思っていないと自分が自分でいられないような気がしたから




私は必死で 必死に ソウ言い聞かせていた―――



















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